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早稲田大学と更生支援事業団の共催プロジェクトに参加して

早稲田大学と更生支援事業団の共催プロジェクトに参加して

元航空自衛隊 1等空佐 新谷 和也

私は、航空自衛隊での38年間の勤務を終え民間企業に就職しました。一昨年、再雇用という立場となり、自らの役割の変化、後半人生、特に定年後の生きがいについて考えるようになった時期でもありました。ちょうどその時期に、ご縁により更生支援事業団の個人賛助会員となりました。

入会後は、事業団主催の各種イベントに参加させていただきました。特に、様々な事情で服役された方々の実情、刑を終えた方々のその後の人生など、当事者や矯正・保護の活動の現場のお話などを通じ、未知の世界だった、矯正・保護という領域について様々な角度から見聞する機会を得たことを感謝いたします。

今回は、本年4月から開始されました、「早稲田大学との共催プロジェクト」を聴講した際の気付きについて紹介します。

まず初めに、本プロジェクト実現までの経緯について、株式会社ピクティブの川谷直大さん、早稲田大学法学院学術教授の小西暁和さんにお話を伺いました。

2年前、出版の仕事をしていた川谷さんは、更生支援事業団代表の西田博さんが矯正局長の頃からのご縁により、同事業団出版の「社会に開かれた刑務所」という本の作成に携われました。

一方、川谷さんが以前から交流のあった早稲田大学の小西教授は、14期にわたりゼミを担当していく中で、第一線の矯正・保護の現場で活躍されている方々と交流する場づくりが必要と感じておられていました。

その後、コロナ禍による制約の中にあっても事業団としての活動を進めていきたいという西田代表の強い思いがお二人に伝わり、昨年11月から3月までの複数回にわたり、3人で打ち合わせが行われ、その過程で、以前から川谷さんが産官学共同の活動を活性化したいとの思いが本プロジェクトのベースとなり、コロナ禍の制約の中でも推進できる今回の早稲田大学と更生支援事業団の共催プロジェクトによる「矯正・保護」に関わる外部講師を招いての学生向け特別連続講義が実現しました。

今回のプロジェクトは、「矯正・保護」の世界における啓蒙啓発活な活動の一環で、早稲田大学の小西ゼミの学生の方たちに矯正・保護の現場でご活躍されている方々の認識や考え方を生の声で触れていただくことでした。

講義のテーマの細部は、本HPのお知らせに掲載されておりますので項目だけにとどめますが、以下に沿って実施されました。

·国の視点(基調報告):行刑に社会の風を吹かせるために

 大橋哲氏(法務省矯正局長)/西田博氏(事業団代表)

·当事者の視点:当事者だからできることを求めて

 古藤吾郎氏(NYAN事務局長)/岡崎重人氏(川崎ダルク施設代表)

·保護司の視点:保護司の限界を超えて

 中澤照子氏(元保護司)/十島和也氏(保護司、中澤氏の元対象者)

·医療·福祉の視点:医療·福祉の視点が不可欠の時代に

 福田祐典氏(医師)/伊豆丸剛史氏(厚労省社会・援護局出所者支援専門官)

·事業者の視点:社会の公器としての使命とは

 歌代正氏(前大林組監査役)/安田祐輔氏(キズキグループ代表)

·メディアの視点:社会での理解の必要性とその理解のために

 松本晃氏(共同通信編集局社会部記者)/巡田忠彦氏(TBS解説委員)

コロナ禍の状況の中、本事業団と小西暁和教授を中心とした早稲田大学の関係者が強い連携のもと特別連続講義を企画運営し実現できたことは素晴らしい実績となりました。

特に、6回にわたる幅広い分野での外部講師による講義は、それぞれの現場で活躍されている新旧の世代からお話を直接お聞きすることができ、学生に語り掛ける一方で後継者への魂の伝承も行われていると感じる場面がいくつもありました。

更に、学生たちの真摯で真剣な眼差しの受講態度、真摯で問題意識の高い質問により、講師の方々の熱も高まり、次世代の若者への正しく伝えていきたいという思いがあふれる機会となりました。

自分の知らない社会の実像について知り、他者との関係性、人との出会い、様々な社会貢献の形があることに気づかせていただきました。これからも様々な形でのかかわりを持ち無関心とならないように意識しながら引き続き更生支援事業団の活動に参画していきたいと思います。

現在、今回のプロジェクト実現により、続編の実施について計画が予定されています。更に書籍出版も予定されており、今後の産官学共同の活動に更なる期待が寄せられることと思われることを大変喜ばしく思います。

これからも、社会復帰支援、様々な事情で就労や自立に難しさを感じている人への自立支援など、社会の中で様々な理由により支援を必要とする人たちへの支援活動を通じて、国民の誰もが生き生きと暮らせる、安心安全な社会の実現を目指します。また、矯正・保護の正しい実情を社会に正しく発信し、多くの方々の理解促進を図っていきますので、引き続き皆様のご理解とご支援を頂ければと思います。

よろしくお願いいたします。