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【シリーズ特別寄稿vol.6】障害者の就労支援

障害者の就労支援

                  更生支援事業団理事 横 尾 邦 彦

2か月に一度開かれる南高愛隣会の触法連携会議に出席している。

ここでは,同会で生活する触法障害者について,その処遇方針の確認・変更をはじめ,現行制度や実務上から生じる問題等への対処策などを検討する機会としている。皆さんは南高愛隣会についてご存知だろうか。正式名称を社会福祉法人「南高愛隣会」といい,知的・精神的に障害を有する方の社会での自立を目指して,長崎県内で活動する福祉法人である。今日では,職員約600人により,日中支援を含め約1,000人の対象者を支援している。また,平成21年からは,現顧問の田島良昭氏の反省と熱意から生まれた,触法障害者に対する新たな取組として地域生活定着支援センターを開設し,同年4月からは,触法障害者の再犯・再非行防止に寄与する目的から,更生保護法人 雲仙「虹」を新たに設け,高齢・障害者について,常時40人程度の生活支援と日中支援を実施する法人として活動しており,これに関連する会議に参加している。

先般の会議では,障害を持つ刑務所出所者の就労支援に関し,問題提起があった。現在「虹」で生活している仮釈放者について,刑務所収容中に就職先が決まり,保護観察を終え次第他県に赴く予定だが,生活全般を含め果たしてちゃんとやっていけるか疑問がある,という内容であった。多くの障害者は,社会生活の中で,自立した生活をする上においては大なり小なりの福祉的支援(療育手帳の取得や制度の活用等)が必要であるところ,そもそもその支援を求め得るだけの知識がなく,少々知識があっても得るための方法に考えが及ばないし,他方,日々生じるストレス(動きが鈍いことで皆についていけず,いじめの対象になることもある)の解消ができないケースもあるだけに,福祉関係者の手助けを欠くことができない。つまり,住まいと仕事が確保されただけでは独り立ちできず,ひいては再犯に繋がりかねないということである。福祉的支援を得られないおそれのある環境に置くことは,「障害者に対する虐待」につながると懸念を示す担当者もいる。

ところで,平成29年12月に閣議決定された「再犯防止推進計画」において,5つの基本方針の下,7つの重点課題と主な施策が示された。その中の重点課題の一つに「就労・住居の確保」がある。平成24年7月に策定された「再犯防止に向けた総合対策」で示された「「居場所」と「出番」を作る」の表現が変更されたものであるが,「刑務所出所者等の就労の確保」に関しては,再犯時に無職であった者の比率が有職者に比較して高いという状況にかんがみ,すでに平成18年度から「刑務所出所者等総合的就労支援対策」が進められてきた。ハローワークと矯正施設が連携して,職業相談,職業紹介,事業主との採用面接及び職業講話等が実施されるとともに,昨今では,刑務所出所者等の採用を希望する事業者が,矯正施設を指定した上でハローワークに求人票を提出することができる「受刑者等専用求人」が運用され,一方,矯正就労支援情報センター室(通称「コレワーク」という。)を設置し,企業のニーズに適合する者を収容する施設の情報を提供することができる制度が構築されている。そのほか,矯正処遇の充実展開はもとより,就労支援スタッフの配置や職業訓練による資格取得,職場体験制度の導入,就労支援説明会の開催等の取組により,就労確保に向けた諸施策が精力的に進められている。矯正施設においては,こうしたあらゆる施策を駆使し,刑務所出所者等の就労確保に努められている現状であろうかと思うが,知的・精神的に障害を有する受刑者については,彼らが有する問題を念頭において,福祉的支援という視点を要件から欠くことなく,就労先と住居の選定に努める必要があると考える。一般の知的障害者の就労支援は,各都道府県に複数ある「障害者就業・生活支援センター」でサポートされているが,ここでは就労に関する支援だけではなく,生活支援を含めて行われているところであり,刑務所等の福祉専門官は,その知識として承知しているものと思う。刑務所出所者について,出所前に就労先と住居を決定する場合は,これらの決定だけでなく,知的・精神的障害を有していないかを確認し,そういった障害を有する場合においては,就労先あるいは予定居住地の近隣にある「障害者就業・生活支援センター」と直接に連絡を取り,あるいは当該者が仮釈放により出所する場合は,保護観察所から調整を図ってもらうなどして,出所等に至るように配意しなければならないことを再認識したところである。