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自治体の再犯防止への取組みと地方創生の可能性(一)【要旨】
東北公益文科大学公益学部准教授 斉藤徹史
平成28年12月に再犯の防止等の推進に関する法律が施行され、その1年後、犯罪対策閣僚会議は再犯防止推進計画を策定した。ここでは、再犯防止・更生支援における自治体の役割が強調され、各自治体は「地方再犯防止推進計画」を策定するように要請している。
従来、ともすれば、自治体としては、更生支援は国が担うべきものと考えていたようであるが、国と自治体が一体となって再犯防止に向けた取組みを求めたことは画期的ともいえる。
とはいえ、自治体が更生支援に関わるには、今なおハードルが高い。そこで、令和元年8月、法務省は、市町村の再犯防止施策の推進に資するために「地方再犯防止推進計画の手引き」を公表した。その中では、自治体に各種取組みの実施を求めている。そこで、山形県内の自治体35市町村の取組状況について、本稿を執筆した令和元年11月時点で各自治体のホームページをみたところ、ごく少数の自治体でいくつかの施策が行われているに止まっていた。
地方再犯防止推進計画で取り上げる施策のなかには、発注者たる自治体が、入札において、事業者が「協力雇用主であること」を加点評価することによって、その数の増加や更生支援の活発化を目指そうとする取組みがある。ただし、入札で「協力雇用主であること」を発注者が優遇することを奇貨として、不誠実な事業者が協力雇用主となることは避ける必要がある。犯罪をした者が、質の悪い労働環境におかれることで、却って再犯を促すおそれがあるためである。
自治体の再犯防止への取組みと地方創生の可能性(二・完)【要旨】
本稿を執筆した令和元年11月時点で、山形県内35市町村で地方再犯防止推進計画は1つもつくられていない。しかし、ごく少数の自治体が、別の行政計画の中で更生支援に言及している例はある。同推進計画の策定を進めるためには、首長や議会が更生支援に対する理解を深め、率先して再犯防止担当部署に策定を働きかけることが必要である。
自治体の更生支援への係わり方について、以下の3点の私見を述べる。
第一に、自治体は犯罪をした者であっても、「住民」の一員として扱い、積極的に更生支援に取り組むべきである。犯罪をしたことのない住民が福祉サービスを受ける権利があるのと同様に、犯罪をした者であっても、刑務所からの出所後に区域内に住所を有すれば、住民として就職や福祉などの提供を自治体から受ける権利を有するはずである。
第二に、自治体は更生支援をまちづくりに生かすべきである。地域のまちづくりにおける最大の課題はインフラの老朽化である。しかし、これに対応する建設業界では、担い手不足が深刻である。現在でも協力雇用主の約6割を建設業が占めるとされるが 、犯罪をした者が人手不足の建設業界に就職して定着し、地域の安心・安全を支える存在となるために、まちづくりの観点から、自治体と建設業界の連携を深化させていく必要がある。
第三に、自治体は更生支援を地方創生に生かすべきである。建設業以外でも、各産業で人手不足が重大な問題となっている。そうした多くの領域で、犯罪をした者が更生後に活躍できるように、自治体が主導して、犯罪をした者への物心両面の支援、地域住民の不安の解消、協力する事業者への支援などを行えば、地方創生にも貢献できると考えられる。
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