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更生支援事業団 参与 山本孝志
今年も、刑務官有志による災害支援ボランティアチーム「志援」の関西地区チーム「弁慶隊」が、石川県穴水町下唐川地区で活動を行いました。
今回の活動は、能登半島地震で被災された方々が暮らす「石川モデル」と呼ばれる仮設住宅に隣接する、ふるさとハウスの菜園整備でした。炎天下、ビニールハウス内は四十度を超える厳しい環境でしたが、土づくりや石拾いなど、仮設住宅で生活される皆さんが野菜づくりを楽しめるよう汗を流しました。
災害ボランティアというと、発災直後の泥かきや家財の搬出を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、復旧から復興へと歩みを進める被災地では、このように被災者の暮らしを支える息の長い支援も欠かすことができません。現地で改めて、その大切さを実感しました。
私は、こうした活動を始めた理由の一つに、「刑務所が社会に理解され、必要とされる施設になってほしい」という思いがあります。刑務所は、犯罪を犯した人を収容する施設です。しかし、それだけではありません。受刑者の改善更生を支え、再び社会の一員として歩み出すための施設でもあります。その役割を果たすためには、地域社会との信頼関係が欠かせません。
熊本地震の際、熊本刑務所は約三か月にわたり避難所を開設し、多くの被災者を受け入れました。全国の矯正施設から職員や物資の支援も行われ、刑務所全体が一丸となって被災者支援に取り組みました。その間、受刑者たちは避難所運営に支障を生じさせることなく落ち着いて生活し、職員の活動を支えてくれました。社会のために尽くす職員の姿は、受刑者にも少なからぬ影響を与えたのではないかと思います。
また、この被災者支援は思いがけない成果も生みました。熊本刑務所は老朽化に伴う建替えが課題となっていましたが、地域住民や自治体から「地域に必要な施設」として理解を得ることにつながり、現地での改築が進められることとなりました。
もちろん、そのために避難所を開設したわけではありません。しかし、日頃から地域のために尽くす姿勢が、人々の信頼につながることを教えてくれた出来事でした。
現在、私は自治会長として地域の防災にも携わっています。その立場から感じるのは、多くの自治体が非常食や防災資機材の保管場所の確保に苦慮しているという現実です。刑務所には一定期間分の非常食を備蓄し、全国の矯正施設が相互に支援し合う体制があります。こうした強みを地域防災にも生かすことができれば、刑務所はさらに社会に身近で、頼られる存在になれるのではないでしょうか。例えば、自治体が保管場所に苦慮している防災資機材や非常食の管理に協力することも、一つの可能性ではないかと思います。
「志援」の活動は、単なる災害ボランティアではありません。社会に必要とされる刑務所とは何かを考え、行動する取組でもあります。
地域のために汗を流すことが、地域の理解につながり、そのことが受刑者の改善更生にも良い影響を与える。私は、そのような好循環をこれからも大切に育てていきたいと考えています。
7月下旬には、関西地区の「弁慶隊」が中心となって実施する能登での活動に、私も九州地区の「魁隊」の一員として現地へ赴き、仲間とともに汗を流したいと考えています。志援の活動が、地域と刑務所を結ぶ小さな架け橋となることを願っています。